国境なき事務員 (国境なき医師団の事務員の現場レポート)

2018年、汐留の広告代理店から国際医療NPO「国境なき医師団」へ転職。現在、アドミニストレーター(事務員)としてケニアでのHIV対策プロジェクトで働いてます。尚、このブログはあくまで高多直晴の個人的な経験や考えを掲載しています。国境なき医師団の公式見解とは異なる場合もありますのでご了解ください。

パリの新人研修はじまる

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国境なき医師団の海外派遣要員として採用されるとまずフランスの本部で行われる新人研修に参加しなければならない。 その後想定されるタフな派遣先(南スーダンバングラデッシュ、パプアニューギニアなどなど)と比べると「国境なき医師団」らしからぬ?ふらんすでの研修。彼の地に向かう機内では世界各国の美人の看護婦さんやお医者さんとどんなお勉強をするのかしらん?などとアホな妄想を抱いていたのだが。しかし実際の研修は当然のことながら「国境なき医師団」らしい、とてもリアルでシビアな内容だった。

 医療、非医療スタッフへだてなくすべての新人が参加するこの研修。国境なき医師団で働く海外スタッフはいきなり紛争地域や災害地域で即戦力になることを期待されている。新人といえども、参加メンバーはすでに何かしらの専門(得意)分野を持っている。例えば医師の場合は外科手術等の臨床経験とスキルが一定以上のレベルでなければならず、看護師も手術室看護士の経験者が多かった。そしてアドミニストレーターについていえば大手の自動車メーカーや銀行それに軍や国際機関の経験者などがいた。中にはニュージーランドの映画プロデューサーもいて、皆がなかなか面白いバックグラウンドをもっていた。とはいえ多くのメンバーは「10万人が暮らす難民キャンプ」や「銃弾が飛び交う内戦真っ盛りの国」で働いた経験はゼロだ。だから新人研修はそういう「難民キャンプ」や「内戦真っ盛り」の場所で即戦力になるためのトレーニングが行われた。

たとえば「ワクチンキャンペーンの移動中に政府軍の検問にひかかった場合のロールプレイ」とか「機関銃をもった強盗に事務所の金庫が襲われた時のマニュアル」とか「悪徳建築会社の水増し請求書の見破り方」とか。24年間のサラリーマン生活では一度も習ったことがないとても斬新な内容だった。

 美人の看護婦さんと楽しいお勉強とは少し違っていたけれど、この新人研修はいままでの人生で受けたどの研修よりもエキサイティングでチャレンジングだったことに間違いない。