国境なき事務員 (国境なき医師団の事務員の現場レポート)

2018年、汐留の広告代理店から国際医療NPO「国境なき医師団」へ転職。現在、アドミニストレーター(事務員)としてケニアでのHIV対策プロジェクトで働いてます。尚、このブログはあくまで高多直晴の個人的な経験や考えを掲載しています。国境なき医師団の公式見解とは異なる場合もありますのでご了解ください。

年間2000人のレイプ被害者の診察を行うSGBV診療科

 休暇初日はナイロビに立ち寄った。

 行先はナイロビの巨大スラム、マザレ地区で運営している国境なき医師団の診療所だ。新聞記事や内部資料などを通じて知識としてスラムの医療活動のことは知ってはいたけれど。機会があれば、自分の目と耳を通じて知っておきたいと思っていて。まあ単純にボクが働くHIVプロジェクト以外の活動(難民、貧困、飢餓対応など)はどんな事をやっているんだろう、と興味があったんです。

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Wikiから借りてきたマザレのスラムの写真。水道はあるが、電気はほぼ来ていない。


このマザレ地区のプロジェクトでは日本人看護師(Head of Nurse)のトモミさんが働いていて。今回は彼女に無理いってマザレの診療所を案内してもらいました。小柄で可愛らしい看護師さんだけど実はケニアの前は南スーダンとシリアのミッションに参加していた”歴戦の勇士”。人はみかけによらないものだとつくづく思います。彼女によるとこのスラム地区の診療所では主に3つの活動を行っているとのこと。

 

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セキュリティー確保のため出入口はこの鉄扉のみ。他に看板もなにもなく、銃持ち込み禁止のステッカーが張ってあるけれど。どうみても病院の入り口に見えませぬ。



①(救急)外来の受付

管轄するマザレ地区で起こった交通事故、喧嘩、ドラッグトラブルによる被害、銃撃(主に警官に撃たれる。)などの外傷治療がもっぱら。そのスラムの住人の救急搬送も無料提供している。

 

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外来受付と治療室。金曜の夜ともなると酔っぱらいのケンカ(ナタで殴り合い)やドラッグトラブル(多くは銃創)などで混雑する。

結核病棟の運営

結核は空気感染するので緊急外来とはスラム内の別の施設がある。

アフリカの多くの国ではHIV感染後にAIDS発症して免疫力が低下、その後、結核に感染し死亡するケースが圧倒的に多い。(AIDS発症患者の30%-40%が結核になってしまう。)

参考HP:結核は世界の問題|大塚製薬

 

③SGBV・性暴力診療科

SGBV(Sexual and Gendar Based Violence)というのは一言でいうとレイプ被害者の心身の治療を行う診療科このと。スラム地区とその周辺でレイプ被害にあった患者を対象に治療を行っている。特に心理ケアについては専門カウンセラーと精神科医のタッグチームで対応している。またケースに応じて地元警察との連携もはかっている。

 

さて本題SGBVについて。

マザレ地区の人口はおよそ60万人で杉並区とほぼ同じです。SGBVについていえば2017年はウチの診療所だけで2000人以上のレイプ被害者が診察と治療を受けています。ちなみに去年の最年少の患者は三歳児だった。もちろん診療所に来ていない患者も大勢いるので被害実数はこれよりはるかに多い。例えば杉並区のひとつの診療所で年間2000人以上のレイプ患者を受け入れてるなんて事になったら、もうそれはあり得ないほど壊滅的な社会状況だと思うのだけれど。そんなありえない状況が起こっているのがここの診療所でした。

 

実際、ボクが案内された時も待合室には4人の女性がいて。その内3人はおそらく10代で、さらに一人は明らかに10代前半だった。知らなければ中学校の保健室と見間違うほどだ。そして彼女たちと目が合う。控えめな表現でも「最悪な経験」をしたばかりの彼女たちに「How are you?(気分はどう?)」などという訳にもいかず、かるく「Hello」とだけ挨拶を交わした。「他のプロジェクトを見ておきたい。」ということでスラムの診療所を訪問してみたものの、こういう事態は想像していなかった。

 

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SGBV診療科の一角。右側がカウンセリングルームで左側が精神科医の診断室。プライバシー確保のため基本的に患者と関係者以外立ち入り禁止。

彼女たちは初診で外傷の診断のほか被害状況のヒアリングと専門家による心理カウンセリングを受ける。レイプ被害者の状況は一様ではないので患者一人一人に応じたケアプログラムを組み、それに沿って二回目以降の治療が進められる。性感染症や妊娠がある場合は心理ケアと同時にそちらのケアも並行する。そして性感染症と一言でいっても、日本と違いナイロビのスラムでは深刻な病名も多い。代表的なのはHIVと肝炎。HIVは放置すれば致命傷になるし、肝炎に感染すれば将来的に肝臓癌のリスクが跳ね上がる。

 

レイプが元でHIVや肝炎になるなんて「最悪の中の最悪」なのだけれど、年間2000人も患者がいれば少なからずそういうケースにも出くわすらしい。今回、興味半分で訪問したスラムの診療所。当初は「自分の目と耳できちんと知っておきたい」などと呑気なことを思っていたのだけれど。いざ現実を目の当たりにすると「知っておきたい」などという自分の浅はかさを知るばかりで。今回、ボクはほとんど何も知ることが出来なかったように思う。

 

ー待合室の彼女たちはどんなおもいでいるのか?

ー何故、男たちはこうも頻繁にレイプを繰り返すのか?(ホンマ、何考えとんねん!)

ーそもそもボクはなんで赤の他人のレイプ被害のことをブログで書いてるんだっけ?

 

正直、そういう基本的なことは全然わかりませんでした。自分は全然知らないんだなあということだけが分かったような。そんな訪問でした。

 

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スラムと道を挟んで反対側にあるのがイスリーと呼ばれるイスラム系住人の地区。待合室でみた女の子と同い年くらいの子が談笑していた。

それでも、こういう事実があるってことは、ほかの日本人やほかの先進国の住人に伝えたいとういう衝動のようなものがボクの中に生まれまして。遥かアフリカでの地で女の子が何千、何万人レイプされても、まあ日本の日常生活にはたぶん1ミリも影響はないのだけれど。アメリカやEUでは一時、#Me Too が大きなニュースになったりしてたけど。レイプ経験者が4人に1人といわれるケニアのスラムではme tooだらけで全然ニュースにもならない、ということを何となく知ってほしかったんですよね。

 

 

病院でHIVテストを受けてきたっス。

先週、運営している病院でHIVテストを受けてみたっス。実はこれが2回目。一回目は4月に受けてまして。なぜボクが4月にHIVテストを受けたかというと「もしかしたらワシ感染したかもしれん」という”心当たり”があったからなんです。

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HIVは基本的に血液感染なので原因のほとんどはセックスなどの皮膚接触の際に血液が体内に入り込むことで起こります。つまりお互いの皮膚表面の(毛細)血管が摩擦によって破れて出血し、そこからウイルス感染するんですね。(母子感染や注射針の使いまわしなどほかの感染原因もあるけど。成人の感染経路はほとんどがコレ)。裏を返せばどんなにHIVポジティブの罹患率が高い地域で暮らしていても、注射針を使ったドラッグや買売春などせず普通の生活をしてる限り、SEXの際コンドームをつけていれば感染するリスクは非常に低いのです。一般人は誰かと拳を交えた血みどろの戦いを日々を送る“ストリートファイター2”や“鉄拳”(詳しくは下記「ハイスコアガール」参照ください)のような特殊な生活でもなければ、ほとんどの場合、感染しません。

 

f:id:st-maria1113:20180708151017p:plainゲーム漫画の金字塔「ハイスコアガール」連載復活してホントよかった!

 

そんでもって、ボクの”心当たり”はセックスではなくちょっと特殊な状況の方でして。特殊といってもストリートファイトではなく、それは綱引き。遡ること3カ月前、このBlog で以前紹介したHIVポジティブの子供たちを集めたカウンセリングのリクリエーション活動(文化祭と運動会のミックスみたいなカンジ?)に参加したときに綱引きをやったんですよね。そこで子供たちに交じってザラザラの綱を引きまくったボクの手のひらはボロボロになってしまい。気づいたら出血しておりまして。「アレ?血ぃ、出とるやんワシの手。これヤバくね?」と思った訳です。その日、宿舎に帰ってからHIVの専門医師(「眠り病」でも相談したシェアメイト)のチャールスに早速相談。

 

「今日のイベントでなあ綱引きやったら出血したんよ。心配じゃけえHIVテストしてくれんかのう(涙)」

「綱引きで感染?そんなん大丈夫に決まっとるやろ。どれどれ手のひら見してみい?」

「ほら、こんなカンジ。」

「ただのかすり傷やん、、、ってかもう全然、出血の跡ないやん。綱引きやから、直接の皮膚接触ないんやろ。全然、心配することあれへん。まあ100%安心とはいえんけどな。感染確率はほぼないで。」

「でもでも、やっぱ心配やんか。血とか出てたし。」

「しゃーないなぁ。今度、テストしちゃるきに。ただ万一感染しとっても潜伏期間があるんけんテストは2回やらんとアカンで。4月に一回目にやって結果がネガティブでも、2-3ケ月後にもう一回や。」

「うん、わかった。」

 

という経緯がありまして。今回、2回目のテストを受けた次第です。

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HIVテストキットを開封する病院ラボで働くスタッフたち。このひと箱で100人分のテストが可能。

今回は二回目だけど、やっぱりHIVテストを受けるのはドキドキです。まずはスクリーニング(第一次テスト)用のキットを開封。このスクリーニングテストでHIVの抗体反応を調べます。テストで抗体反応があった場合はHIVが体内に入った経歴があるということなので「ポジティブ(陽性)」ということになります。もしスクリーニングがポジティブの場合は精密検査(2次検査)でHIVの進行レベルを調べます。

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こちらがキットの中身。試験紙、採血用の針とチューブ、血液の希釈液の4点セット

まずは指先にチクっと針をさして血液を採取。

 

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それを試験紙の左側にたらして10分ほど待ちます。

(なんか小学生の時のリトマス試験紙みたいだ。)

 

すると試験紙の右側のコントロールと呼ばれる方に全て被験者に対して1本線が現れます。これは試験紙が正常に機能しているかどうかチェックするもので、もし線が現れなければ新しい紙を使って再検査です。左側は被験者(ペイシェント)と呼ばれ、血液中のHIV抗体の有無を調べます。もし左側に1本線が現れると結果はHIVポジティブ(陽性)。つまり右側一本だけの線ならネガティブ(陰性)で左右に1本ずつ線があらわれるとポジティブということになります。

目の前の試験紙を採血された自分の血液が浸透していきます。

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試験紙の左側(ペイシェント側)に希釈した血液をポタリとたらして、浸透するのをまちます。その間、約10分。

試験紙を眺めている10分の間「もし自分にポジティブの結果が目の前に現れたらどうなんやろなあ。」と想像してました。他人にバレたら再就職する場合は不利になるんだろーなあ。家族、親族との関係も結構気まずくなる可能性もあるよなあ。友人、知人も戸惑うだろうなあ。忘年会でフグ鍋とか行っても一緒にたべるの嫌がる人もでてくるだろうなあ。もしも六本木のキャバで王様ゲームが始まってもオレ一人仲間外れかなぁ...などなど。いろんな想像がアタマの中をかけめぐります。

 

そして“ドキドキワクワク”の10分間が経過。結果は、右側だけに線一本!ということでネガティブでした。(医師チャールスの言う通り、ボクはちょっと心配性だったのかもしれません。)

 

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テスト結果、右側(コントロール)だけに一本線が現れたので今回はネガティブ(陰性)です。ホッと一安心の瞬間。

もしポジティブだったら、、、医学的意味での心配事は以前にくらべてかなり軽減されているものの社会的な意味での心配事はまだまだとても大きいのが現実で。ボクはもう40代後半の事務のおっちゃんなので、HIVになった場合の社会的リスク(心配事)といえば多少の人間関係と忘年会のフグ鍋と王様ゲームくらい。でもこれが10代の若者だったらキッツイよなあ。就職、結婚、親子関係、恋人友人関係などなど山のように心配事(というか過酷な現実)ありまくり。そういった意味でHIVってARV薬とかの医療ケアと並行して、若い患者へのカウンセリングとかの心理ケアってマジで重要だよなあ。と改めて思った次第です。

 

もし読者の皆さんに“心当たり”がある方がいれば一度、テストどうっすか?お手軽、即効、無料です。

 

HIV検査 相談マップはこちらから

https://www.hivkensa.com/search/?mode=list&enc=%E3%81%82&prefecture=11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて狂って、昏睡し、そして死ぬ「アフリカ睡眠病」の話

突然ですがハエに襲われたことあります?

実は先日、車で移動中にハエの猛攻にあいまして。その時、車内に侵入してきた一匹にチクリと刺されてしまいまして。アフリカではハチじゃなくてハエも人を刺すんですねえ。そして問題はそのハエの名前がツェツェバエだったてことなんです。おかげでちかごろちょっと憂鬱。

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この方が”悪魔の使い”の異名をもつツェツェバエさん。

もし読者の中にアフリカの熱帯病に詳しい人がいらっしゃったら、

「ま、マジでツェツェバエにやられたんけ!めっちゃヤバいやんけ!!!!!!」

とちょっとばかし興奮されてるかもしれません。

なにしろこのツェツェバエ「アフリカ睡眠病」という世にも恐ろしい病気を媒介する”悪魔の使い′”なんです。発病するとあの虎舞竜のロードの歌詞「眠れる森の少女」みたく永遠に目が覚めません。ウィキペディアの記述ではこう書かれています。

 

アフリカ睡眠病(アフリカすいみんびょう、sleeping sickness)は、ツェツェバエが媒介する寄生性原虫トリパノソーマによって引き起こされる人獣共通感染症である。病状が進行すると睡眠周期が乱れ朦朧とした状態になり、さらには昏睡して死に至る疾患であり、これが名前の由来となっている。

アフリカ睡眠病 - Wikipedia

下手な怪談なんかより、よっぽどこえーよウィキペディア

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恐怖のウィキペディアから拝借したツェツェバエの図

 

ちなみに昏睡状態にまるまえに結構な確率で精神錯乱に陥るんだそうで。そんな全然シャレにならん病気があったとは。そういう大切なことはケニア来る前に教えといてよ。そしてアフリカでは毎年5000人~7000人がこの睡眠病で死んでるとのこと。もうオレ刺されちゃったんだけど、大丈夫なのかしらん。

 

ハエの猛攻にあったのはウチの事務所から車で30分ほどのルマ地区(ツェツェバエとサバンナで有名)を移動中でした。ヒッチコックの「鳥」の再来かよ、とツッコミを入れたくなるほどの猛攻で。ハエが車を襲うってどういうことなん?そんなん「よんでますよ、アザゼルさん」みたいなブッっとんだギャグマンガだけの話かと思ってたんだけど。

f:id:st-maria1113:20180629053403p:plain本文にはほぼ関係ないけどハエの魔王”ベルゼブブさん”も登場する悪魔系マンガの最高峰。「よんでますよ、アザゼルさん」おススメです♪

 

しかしまさか、ハエが人間を襲うなんてことがリアル世界に存在するとは。

こちらが命掛けで撮影した全速力で人間を襲うツェツェバエの貴重な映像。

5秒間撮るのが精一杯でした。撮影するヒマがあったらハエ叩きしたほうがナンボかええやん。ただのブログ素材命を張ってどうするんや、わしゃほんまのアホじゃ。

 

その日は同僚と休日のドライブだったので乗っていた車は仕事用の"ちゃんとしたランクルじゃなくて地元の知り合いが所有している、窓ガラスが割れて後部座席のドアもイカれてる”壊れてたランクルだったんです。そこに数百匹の殺人バエが襲ってきまして。ドアや窓の割れ目、床の穴(なんでクルマの床に穴があるんだよ!?というツッコミはおいといて)からブーン、ブーンと容赦なく侵入してきます。同乗していた医師のマイクとチャールズはツェツェバエと睡眠病のリスクを理解してるので、ボク以上にちょっと焦っているご様子。そんな焦っている2人の医者をみると、素人のボクも焦ってくる訳で。車内ではおっさん3人がマジ顔でビシバシとハエを叩きまくりです。

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こちらはコンゴ共和国の「アフリカ睡眠病対策プロジェクト」で奔走している国境なき医師団の”ちゃんとしたランクル

皆が手にタオルをまいたり、スマホの裏側使ったり、血相変えてとにかくハエをつぶしまくって。ボクも手あたり次第にツブしてたつもりだったのですが。ふと気を抜いた瞬間に”チクッ”と足に痛みが!(話はちょっとズレますがこの"チクッ”とした痛み、子供の頃に母親の実家(鳥取県の大山山麓)にある牛牧場でアブに噛まれた時の痛みとまったく同じでちょっと懐かしかったのですが、そんなセンチメンタリズムに浸るヒマはなく)下を向いたら足の上にいるじゃん、ツェツェバエ!いたいけな少年だったあの夏の日、アブに刺された時と同じ感覚が肌に残っとるやん、どないしょ(涙)。

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ハエからの攻撃を警戒する三人組。この日は三人揃って休みだったので近所のサバンナまで楽しくドライブするはずがまさかの展開に。

 

ちなみに「恐怖のウィキペディア」によると、明確な睡眠障害(突然眠くなったり、逆に夜眠れなくなったり)などの自覚症状が出るまでには2-3年かかるとのこと。ただ症状が出るころにはすでに中枢神経がやられいるらしい。それって”死亡フラグ”が立ちまくりじゃん!

そんなこんなで近頃は「アフリカ睡眠病」の恐怖に悩まされてまして。心配で夜も眠れません、、、そう眠れない。アレ?これってもしかして、、、。

 

※と、こんなことを記事をかくと、心優しい皆様に心配をおかけしてしまうかもしれませんが「一回刺されたくらいでは感染リスクはめっちゃ、めっちゃ、めっちゃくちゃ低いからさあ。とえいあえず大丈夫じゃね?まあ確率はゼロじゃないけどね(笑)」と同乗していた医者からのファースト&セカンドオピニオンももらったので、どうかご安心くださいませ。

そして文中に写真も掲載しましたが、ボクの職場、国教なき医師団もコンゴを中心に「アフリカ睡眠病」対策プロジェクトを行ってます。ご興味ある方こちらのサイトもどうぞ。

アフリカ睡眠病を抑え込む——MSFチームが徹底追跡 | 活動ニュース | 国境なき医師団日本

「昨日、ボクの父ちゃん結核で死んじゃったんだ」話をする詐欺少年クンたちの話。


今日、仕事場から歩いて帰っていると12才くいらいの少年Aと8歳くらいの少年Bの2人が近寄ってきた。2人ともボロボロのTシャツにボロボロのゴムぞうり。この辺りの典型的な貧乏少年のスタイルだ。

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この子たちは本文とは全く関係ない、近所のとっても良い子たち。

アフリカの田舎では、非黒人(白人とかアジア系とか)が町中をあるいているとほぼ100%ガキども、もとい、子供たちが「ムズング(白人)How are you!!!!」と声をかけるくる。カンフーの真似ごとをしながら「ハイ、ジャッキーチェン」などと叫びながら挑みかかろうとする輩も少なからずいる。これが正直、かなりウザい。2人の少年はそんなアフリカンなガキ共と比べると、ちょっとお行儀よく話かけてきた。

 

※ここからは臨場感を出すために会話形式でお届けします。

少年A:おっちゃん中国人?それとも日本人なん?

オレ:ワシは日本人じゃ。ワレはケニア人かいのう?

少年A:オレはケニア人に決まっとるやん。

少年B:ボクもケニア人やで。おっちゃんはここに住んではるん?

 

2人ともなかなか愛嬌のある笑顔だけれど。「いちいちガキと相手すんのめんどくさいなあ。早くウチに帰って、たっぷりベーコンのクリームパスタ作りてえなあ」と内心で思いつつ会話を続ける。

 

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こちらも本文とはほぼ関係ないけど、最近の自信作「牛乳を使わないベーコンたっぷりローマ風カルボナーラ」仕事をおえて料理をするのはともて良い気晴らしになるのよね。

オレ:そうじゃ、ワシの家はこのすぐ先じゃ。

少年A:ところで日本人のおっちゃん。相談があるんよ。

オレ:なんじゃい?

少年A:(少年Bを指さしながら)実は、、、こいつのオヤジ、昨日死んでもうてん。

オレ:な、なんやて!マジか!

少年A:マジや。そんで明日が葬式やねん。

オレ:そら、大変じゃのう。

少年A:そやねん、コイツの家、貧乏やからオヤジがおらんようになって、

めっちゃ大変やねん。そんでな日本人のおっちゃん、

葬式代やとおもてコイツにカネやってもらえへんやろか?

 

オレ:(やはりそう来たか、ガキどもよ。)

その前にな、一つ聞いてええか?オマエの父ちゃんなんで死んだん?

少年B:父ちゃんはHIVになって、その後TB(結核)で死んだんや。

オレ:ほう結核かい。そら辛いのう。ところでお父ちゃんどこの病院行っとったん?

少年B:(思いがけない質問にしばし沈思黙考)

少年A:(しどろもどの少年Bにかわって)すぐそこの公立病院や。

オレ:お前らなあ、大人に嘘ついたらいけんわい。

ガキどもよーく聞けよ。ワシはそこの病院で働いとるんじゃ。

(本当は病院じゃなくて、その近くの事務所で働いてるんだけどね。)

 

今週、あっこの結核病棟で死んだ患者は71才のバアさんだけじゃ。

お前のオヤジは71才のバアさんなんけ?

2人:、、、、、、。

少年A:やべええ、バレちった。 ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ。

    日本人のおっちゃん。また今度!SEE YOU!

 

そういって悪ガキ二人は悪びれることもなく去っていった。

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こちらも本文とはあまり関係ない、ビクトリア湖のほとりに生息しているケニア版サギ?

この「オヤジが死んじゃった」詐欺や「母ちゃんが病気」詐欺は、途上国のガキ共が良く使う小遣い稼ぎの手口だ。そういえば去年、カトマンズにいった時も似たようなのがいたし。こいつら地下ネットワークでつながっとるんかい、と思うほど手口が似ている。以前のボクなら「ちょっと騙されてやろうかなあ」「もしかしたら、1%くらいの確率でホントの話かもしれないしなあ」と思って、50円くらいくれてやったかもしれないけれど。

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こちらも本文には関係ないけど、写真は遠隔地域診療所の結核病棟。先進国ではほとんど聞かなくなったこの病名もアフリカの多くの国では死因のナンバーワン。そしてケニアではエイズ発症患者の6割が結核に感染している。

さすがに職業上、病気ネタ、HIVネタの詐欺少年にひかかってやる訳にはいかない。

少年たちよ、悪いが他所をあたってくれたまえ。ということで本日の教訓。

「国境なき事務員なめんてんじゃねーぞ、ゴラァ!!」

 

 

 

医療チームの撤退はイコール”患者の死”だったりする訳で。

ここに一台のプロジェクターがある。エイズHIVプロジェクトの予算会議で使うために倉庫から取り出してきたヤツだ。ちなみにボクは事務のおじさんなのでプロジェクトの予算管理は大事な仕事のひとつ。

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ちなみに写真のお部屋がわが職場、通称、ADMIN ROOM(≒ショムニ)

世界中から頂いた貴重な寄付なので無駄遣いは許しません、、、キラッ。f:id:st-maria1113:20180526063418p:plain

 

それはさておきこのプロジェクター、SONYDLP-EX100 という機種で2010年の製造の逸品だ。少し古いしサイズも大きめだけどシンプルで使い勝手がとても良い。

プロジェクターのセッティングをしていたら上司でプロジェクト統括責任者、ドクター へモッドが事務室に入ってきた。そしてこのプロジェクター見て一言。

「おぉ、このプロジェクターはモガディッシュから来たヤツやんけ!」

ソマリアの備品がこっちに回ってきたんでしょうね。」

「たしか2011年にここでウチのスタッフは二人殺されとるけんのう。」

「マジっすか!?」

「知らんかったんけ?ソマリア全体ではウチのスタッフは全部で16人死んどるんぞ。」

ソマリアではある程度は死んでたと思っていたけど16人か。さすがソマリア。そして、さすが弊社?ハンパないのう。)

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激戦のソマリア首都「モガディシオ」、なかなか味わい深いステッカーだぜ。

そして、このプロジェクターの上面にデカデカと【MOGADISHU】(モガディッシュ)のステッカーが貼ってある。モガディッシュというのはその筋の人にはちっとは名が知れているソマリアの首都名だ。ちなみにソマリアケニアのお隣さんで、あっち側の過激派アルシャバブとはとても仲が悪い。二週間ほど前にも国境付近でケニア軍兵士7名が爆破で殺害されている。ソマリアはここ十数年ほぼ無政府状態が続いていて国連もお手上げ。まあざっくりそんな国の首都がモガディシオ。そして米軍が内戦に軍事介入した時の大失敗作戦のストーリー、映画「ブラックホークダウン」(ブラックホークの墜落)の舞台でもある。どうでもいい話だけど、映画公開時にボクは作品名を「ブラックホークタウン」(ブラックホークの街)だと勘違いして恥ずかしい思いをした記憶があるんですがそれはおいといて。

www.mylifeismovie.com

ちなみにウチの団体は二人が殺された翌年2012年、ソマリア国内でそれにもめげず延べ1500人のスタッフが医療活動を行い62万4千人を診察。そのうち4万1千人の入院を受け入れていた。しかし2013年に完全撤退している。理由はウチのスタッフが現地の武装勢力や政府関係者(ほぼ無政府だけど)から直接の攻撃対象になったことが決め手だった。www.afpbb.com

紛争地域で医療団体が撤退するというのは、軍事団体が撤退するのと少し意味合いが違う。何が違うのかって、それは治療中の患者がいるということ。この場合は年間延べ4万人いた入院患者と62万人いた患者への治療を放棄することを意味する。中には瀕死の患者も沢山いるわけで。その患者を置き去りにして撤退する医療チームメンバーの葛藤はとてつもなく苦く、重かったハズだ。そして紛争地域の緊急医療プロジェクトは多くの場合、撤退と継続の狭間で活動している。ボク自身も新人研修では緊急避難時のプロトコル(作業手順)の演習をけっこうやらされた。できればそんな場面には出くわしたくないものだ。

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トヨタランクルニッサン・サファリも活躍中。すべての車両には「武器持ち込み禁止」ステッカーが貼られてます。

日本にいると「世界で活躍するメイドインジャパン」みたいなフレーズをよく耳にするけれど。2010年に日本で製造されパリの本部経由で戦火のモガディッシュに運び込まれたプロジェクター。ケニアに来た今もなくてはならない頼れるヤツとして活躍中だ。数奇な運命をたどってケニアに逃れてきたこの渋いマシンを眺めながら「モガデッシュで殺された二人のスタッフもコレ使って、スタッフの予算資料とか見てたのかもなあ。」とか思ってすこし感慨深い本日の会議でした。

 

人鶏補完計画-ついにヒヨコと母鶏をゲットーその2

天才的な設計図を作成したあとは街の材木屋に角材、金網、トタン屋根などなどを発注。「これで週末にトンカチ片手に組み立てできるのう。」と夢を膨らませた。せっかく自分で設計した「鶏小屋」なのだから、自分でトンカチしながら作るのが醍醐味ってヤツだ。こういうのはガンプラ作りと一緒で組み立て図を片手にアレコレ思案しながら作る過程こそ一番楽しい時間だよね。

f:id:st-maria1113:20180514035430j:plain完成するまでが一番楽しい、それがプラモ作り。

ところが金曜日の夜、仕事を終えて宿舎にかえると駐車場の片隅に天才的な図面そのままの「鶏小屋」がデーンと置いてあるではないか。とても悪い予感がする。予感というか目の前にあるんだけど、、、。

「アレれ、あれなにかしらん?」一応、ガードマンのフレッドに尋ねてみた。「材木屋が夕方やってきて、置いていったよ。なかなかいい出来じゃないか。高多はニワトリでもかうのかい?」との回答。「や、やられた、、、。完全に殺られたぜ。あれほど自分でつくるから材料だけ運んでくれ。」って発注したのに、なぜ完成品をもってくるんじゃー!これがケニアクオリティーってヤツなか。どうりで見積もりの材料加工賃が高かった(2500円)訳だ。

 

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角材を発注したら、設計図を元に勝手に作ってきやがった、、、悲劇。

しかたないので諦めて、表札部分だけべニア板きって付け足した。「設計の才能もさることながらイラストの出来も天才だな。」。表札デザインが思いのほか上手に仕上り気分も良くなったところで、完成品で届いた怒りはあっさり忘れた。

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お絵描き、お絵描き、楽しいな♪

そして翌日、土曜日の朝。ヤシマ作戦ならぬヒヨコ作戦を実行(全然、ゴロがあってないな)。ビクトリア湖周辺で一番、可愛くて元気なヒヨコ(♀)をゲットすべく探索に出かけた。この辺りにはヒヨコを扱うペットショップはもちろんない。というかペットという概念が多分ない。そしてヒヨコをゲットするには近所で鶏飼ってる家にいって直接交渉するのが一番早いとの結論に至った。そして農村地帯を歩くこと3分。そこらじゅうに母鶏の後を追うヒヨコが歩いている。いつもの見慣れた風景だ。とりあえず最初に見つけた農家に飛び込みではいって「ねえ、メスのヒヨコ売ってくんない?」と聞いてみた。

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突然の現金収入にちょっと喜んでいる(であろう)交渉上手なニワトリおばちゃん。

「ええけどヒヨコ買ってどうするん?」とおばちゃんがいう。「家で飼うんよ」「ふーん、ええけど。ヒヨコだけ飼うんはちいと難しいんよ。母親とペアで飼わんと死んでしまうけん。今ならペアで800円でどうじゃ?」「おばちゃん、それちいと高くないんけ?」「ほんじゃあエサのトウモロコシもオマケで付けちゃるわい」みたいな会話の後、800円で交渉成立。のハズだったのが「ところでウチも子沢山で大変なんよ。100円値上げしてもええかのう?いまなら段ボールもサービスじゃ。」ケニアで中古の段ボール箱が100円もする訳ねーだろ。(日本でも普通タダだぜ?)価格決定後にさらに値上げ交渉をしてくる、やり手のおばちゃん。そしていつの間にかガキ共に包囲されている。しまった、やられた。

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いつの間にかガキ共に包囲される。逃げ回るヒヨコをがっちり捕まえて、慣れた手つきで段ボールに入れてくれた。

広島弁なまりの英語をしゃべくるおばちゃんの勢いに負けて、なぜか最終的に900円も払ってしまった。「まあヒヨコが可愛ええから、良しとしよう♡」

そしてこちらが庭に設置した鶏小屋の完成図。

 

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一夜空けた日曜日も母娘で元気に庭を散歩してます。

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母ちゃんはけっこう人慣れしてて、エサを手に持つと駆け寄ってくるのよね。

この母ちゃんとちびちゃん捌くとかって多分、絶対ムリだよなあ、、、。

とりあえず当分の間は卵産んでくれればいっか。 

人鶏補完計画-ケニアでニワトリを飼ってみようと思うーその1

いきなりだけどケニアでニワトリを飼うおうと思う。

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あ、彼はニワトリじゃなくてペンペンでしたね、、、汗

前回、このブログでも書いたとおり人類は増えすぎている(らしい)。人口が増えると何が問題かというとまずは食糧不足だろう。そこで先見の明があるボクは来るべき食糧危機に備えて、今から食糧の自給自足スキルを磨かねばと思った訳です。目標は糖質、脂質、タンパク質の三大栄養素の元となる食糧を自給すること。

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これが三大栄養素。みんなも栄養バランスには気を付けよう!

糖質(炭水化物)についてはボクが鳥取県民だった時代(1970ー1988)に理科の授業だったか、夏休みの課題だったかでジャガイモとトウモロコシを育てたのでまあなんとなかるハズ。それに母親の実家は農家だ。たぶん米作りのDNAが受け継がれているハズ(米、作ったことないけど)。ということで当面の課題は脂質とタンパク質の自給スキルの取得に設定してみた。ケニアでタンパク質、脂質といえば動物性ということになる。ここらへんだと牛、山羊、鶏が三大家畜。あと魚も一応、動物性タンパク質だけど。こいつらを産んで?育てて、食えば、立派な自給自足スキルが身につくのではなかろうか?問題はどいつで自給自足スキルを磨くかということ。 そこで牛から順に検討してみた。

①牛:デカすぎるので却下。宿舎の庭は狭すぎてムリ。それにボク、牛を捌くのもちょっとムリ。

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ケニアはインド以上にどこに行っても牛だらけ。ちなみに撮影場所は近所のバス停


②山羊:子ヤギをみてると可愛いなあ、飼いたいなあ。ハイジのユキみたいなのだとめっちゃ素敵じゃん、、、と思ってまじめに検討してみたけれど。

f:id:st-maria1113:20180513154335j:plain 「キミはユキを捌けるのか!?」

宿舎の庭に山羊小屋を作るのがコスト的に厳しいことが判明。それに、やっぱ山羊(仮名・ユキ)を捌くのもちょっとまだいろいろ未熟なボクにはムリだな。

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マーケットで売られていた山羊。気分はドナドナ♪


③ニワトリ:一番手軽。これならウチの庭でも飼えそう。それにメスなら卵も食える。ケニアで夢のTKGも可能ではなかろうか!?まさに一石二鳥!

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こちら同じくバス停にいた雄鶏。これならボクにも出来るかな?

一応、宿舎の住人マイクとチャールズに「ニワトリ飼ってもいいかしらん?」って確認したら「楽しそうだし、いいんじゃねーの?」とのあっさり回答。日本ではたまにニワトリの騒音とか話題になってるけど、ここケニアとかイングランド(マイク出身地)とかコンゴ(チャールズ出身地)あたりじゃ、朝の6時にはあちこちで鶏の雄叫びが鳴り響いているので、誰もそんなこと気にしないらしい。

そんな訳でニワトリを飼うことにしました。これがいわゆる「人鶏補完計画」の発動です。(ところでHATENA BLOGはなんで明朝体フォントがつかえないんだよ!!)

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パトレイバーに出てくる特車二課の鶏舎。ボクの好きなシーンの一つ。エヴァに出てくる加持さんの畑と特車二課の畑の演出のやり方を比べると、庵野秀明押井守の作品制作に対する考え方の違いが良くわかる。

そうと決まれば話は早い。鶏の飼育といえば、何はともあれ鶏舎が必要!ということで設計図を描いてみた。「もしかしてボク、天才ちゃうん?」とおもえる精密なプランに思わずウットリ。

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アトリエにて鶏舎の設計図を製作中

あとは材木屋に材料発注だ!でもどうやったら、ケニアで鶏(ヒヨコ🐤)って入手できるのかしらん。この先どうなる「人鶏補完計画」オレの未来は救えるのか?

続きはまた次回!