国境なき事務員 (国境なき医師団の事務員の現場レポート)

2018年、汐留の広告代理店から国際医療NPO「国境なき医師団」へ転職。現在、アドミニストレーター(事務員)としてケニアでのHIV対策プロジェクトで働いてます。尚、このブログはあくまで高多直晴の個人的な経験や考えを掲載しています。国境なき医師団の公式見解とは異なる場合もありますのでご了解ください。

「昨日、ボクの父ちゃん結核で死んじゃったんだ」話をする詐欺少年クンたちの話。


今日、仕事場から歩いて帰っていると12才くいらいの少年Aと8歳くらいの少年Bの2人が近寄ってきた。2人ともボロボロのTシャツにボロボロのゴムぞうり。この辺りの典型的な貧乏少年のスタイルだ。

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この子たちは本文とは全く関係ない、近所のとっても良い子たち。

アフリカの田舎では、非黒人(白人とかアジア系とか)が町中をあるいているとほぼ100%ガキども、もとい、子供たちが「ムズング(白人)How are you!!!!」と声をかけるくる。カンフーの真似ごとをしながら「ハイ、ジャッキーチェン」などと叫びながら挑みかかろうとする輩も少なからずいる。これが正直、かなりウザい。2人の少年はそんなアフリカンなガキ共と比べると、ちょっとお行儀よく話かけてきた。

 

※ここからは臨場感を出すために会話形式でお届けします。

少年A:おっちゃん中国人?それとも日本人なん?

オレ:ワシは日本人じゃ。ワレはケニア人かいのう?

少年A:オレはケニア人に決まっとるやん。

少年B:ボクもケニア人やで。おっちゃんはここに住んではるん?

 

2人ともなかなか愛嬌のある笑顔だけれど。「いちいちガキと相手すんのめんどくさいなあ。早くウチに帰って、たっぷりベーコンのクリームパスタ作りてえなあ」と内心で思いつつ会話を続ける。

 

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こちらも本文とはほぼ関係ないけど、最近の自信作「牛乳を使わないベーコンたっぷりローマ風カルボナーラ」仕事をおえて料理をするのはともて良い気晴らしになるのよね。

オレ:そうじゃ、ワシの家はこのすぐ先じゃ。

少年A:ところで日本人のおっちゃん。相談があるんよ。

オレ:なんじゃい?

少年A:(少年Bを指さしながら)実は、、、こいつのオヤジ、昨日死んでもうてん。

オレ:な、なんやて!マジか!

少年A:マジや。そんで明日が葬式やねん。

オレ:そら、大変じゃのう。

少年A:そやねん、コイツの家、貧乏やからオヤジがおらんようになって、

めっちゃ大変やねん。そんでな日本人のおっちゃん、

葬式代やとおもてコイツにカネやってもらえへんやろか?

 

オレ:(やはりそう来たか、ガキどもよ。)

その前にな、一つ聞いてええか?オマエの父ちゃんなんで死んだん?

少年B:父ちゃんはHIVになって、その後TB(結核)で死んだんや。

オレ:ほう結核かい。そら辛いのう。ところでお父ちゃんどこの病院行っとったん?

少年B:(思いがけない質問にしばし沈思黙考)

少年A:(しどろもどの少年Bにかわって)すぐそこの公立病院や。

オレ:お前らなあ、大人に嘘ついたらいけんわい。

ガキどもよーく聞けよ。ワシはそこの病院で働いとるんじゃ。

(本当は病院じゃなくて、その近くの事務所で働いてるんだけどね。)

 

今週、あっこの結核病棟で死んだ患者は71才のバアさんだけじゃ。

お前のオヤジは71才のバアさんなんけ?

2人:、、、、、、。

少年A:やべええ、バレちった。 ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ。

    日本人のおっちゃん。また今度!SEE YOU!

 

そういって悪ガキ二人は悪びれることもなく去っていった。

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こちらも本文とはあまり関係ない、ビクトリア湖のほとりに生息しているケニア版サギ?

この「オヤジが死んじゃった」詐欺や「母ちゃんが病気」詐欺は、途上国のガキ共が良く使う小遣い稼ぎの手口だ。そういえば去年、カトマンズにいった時も似たようなのがいたし。こいつら地下ネットワークでつながっとるんかい、と思うほど手口が似ている。以前のボクなら「ちょっと騙されてやろうかなあ」「もしかしたら、1%くらいの確率でホントの話かもしれないしなあ」と思って、50円くらいくれてやったかもしれないけれど。

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こちらも本文には関係ないけど、写真は遠隔地域診療所の結核病棟。先進国ではほとんど聞かなくなったこの病名もアフリカの多くの国では死因のナンバーワン。そしてケニアではエイズ発症患者の6割が結核に感染している。

さすがに職業上、病気ネタ、HIVネタの詐欺少年にひかかってやる訳にはいかない。

少年たちよ、悪いが他所をあたってくれたまえ。ということで本日の教訓。

「国境なき事務員なめんてんじゃねーぞ、ゴラァ!!」